「過去の自分」から逃げない。「過去の自分」こそ潜在能力を発揮させる宝庫
久瑠あさ美のメンタルトレーニング実況中継【第15回・最終回】
■真面目さだけでは武器にならない
甲斐荘:「理想の自分」と言われたときに、「こう在るべき姿」みたいになってしまったんですよね。
久瑠:甲斐荘さんにとっては、最初のワークからずっと続いているテーマですよね。甲斐荘さんは「現実を現実として受け止める」ところは優にマスターしている。だからそれをもうひとつ上の観点から見ることをちゃんとやっていきましょう。という話の中でこその、今回のワークなんです。
甲斐荘:そうですね。
久瑠:にも拘わらず、「仮に…もしも生まれ変わったらでいい」と言っているのに……できない。つまり、甲斐荘さんは「いいな」と思うこと、まだ起きていない理想を“いま”この瞬間に生きることに自信がないんだと思います。
甲斐荘:はい。
久瑠:現実にすごく集約をして、現実を手に入れるという在り方を今まですごく努力してきたからこそ、現実から抜けられなくなっているんです。まさに「真面目さが武器になっていない」、それどころか「仇(あだ)になっている」とすら言えます。
甲斐荘:いや、だって、分からないんですよ。
久瑠:それは分からないですよ。甲斐荘さんが「分からない」って言うのは、正しいんです。生まれ変わった先の、「最高の人物」のことですよ?そんなの、分かってもらっちゃ困るんです。「分かってもらっちゃ困ること」を「分からない…分からない」とずっと言っている…そんなの分からないというのは当たり前じゃないですか。
今やろうとしている課題は、事実とか、現実に存在する目標とか、正しい答えがあるものではない。だから「分からない」という回答自体がおかしい…ということ。
甲斐荘:ああー、少し納得できてきました。
久瑠:未来のことをイメージすることは、「分からないから面白い」という形に創ってきたいわけですよね。未来のことが分からないから不安になるのではなく、未来のことが分からないからこそアグレッシブになる、思いっきりやってみる。できるかどうか分からないけど、やってみたいと思える。これが「潜在能力」なんです。
それに対して、「分からないことが怖い」と思っているということは、その手前で「分からないことには手を付けたくない」と思っているわけです。
これは甲斐荘さんの顕著な特徴ですが、「自分がちゃんとできる」ところのリズムに拘っているわけです。
甲斐荘:それは、確かに…まさにそうですね。
久瑠:そうすると、状況が揃っているときはいいですよね…でも、状況が揃わなくても前に進まなければいけないときに、途端にストレスをすごく感じる。今までやってきたこと全てが崩壊するような感覚に陥っってしまう…
でもね、これまで当然だった概念が崩れることが、今まさにこのコロナ禍下で起きているし、これからだって起きるわけですよね。「信じていた世界」が、所詮は「勝手に自分が創り上げた世界」だったことに、甲斐荘さんだって気づいたわけじゃないですか。
しかも、これはただのイメージです。「そうしろ」と命令されているわけじゃなくて、「脳内でイメージする」だけの話なんです。それでも、やらない…1枚の紙の上ですらそれをしないということは、それに対して、自分がどれだけストッパーをかけているかってことですよね。
POINT
◎無自覚な現実から抜け出すことができれば、真面目さは武器となる